セピア色の母
夕べ悲しい夢を見た。母が幼い女の子の手を引いて歩いていた。母はしっとりとした着物の上に羽織をあしらい、八幡神社の鳥居をくぐり抜け神社に向かう大勢の人の渦の中にいた。私は母の後ろにぴったりとくっついて見失うまいと緊張した。神社に向かう人の塊は少しづつ少しづつ進み私の胸は鼓動を鳴らした。母に会える、母と話ができる、いっぱいいっぱい話ができる。「お母さん!お母さん!」私はあらん限りの声で呼びかけた。なのに母は全く気付く気配もないまま知らぬふりをして人の流れに流されていった。手をつながれた女の子と母は黙ってそのまま神社の鳥居をくぐりぬけ大勢の人の流れの中に呑込まれていった。
夢から醒めた私は涙に濡れていた。お母さん、お元気ですか?お変わりありませんか?今どこにおいでですか?今の私、今の現実、これからの私、いっぱいいっぱいお話する事があるのです。あなたが亡くなってからどれくらいの年月が流れた事でしょう。全てがセピア色のアルバムに代わってしまいました。私は元気です。また、お会いできますか。おかあさん………どうぞお変わりなく いつまでも いつまでも……
| 固定リンク
« 河津桜 | トップページ | 歌を忘れたカナリア… »
「伊豆下田の風」カテゴリの記事
- 自分史(2018.08.01)
- 歌を忘れたカナリア…(2018.02.08)
- セピア色の母(2018.02.04)
- 渋柿の変身(2015.11.02)
- きり絵作家 伽嶋清華の作品 神子元島灯台(2015.09.07)
最近のコメント